老化というと足腰が弱ってくイメージがありますが、実際は「口」から老いていくということをご存知の方は少ないのではないでしょうか。
歯や口の働きは、老化現象と深く関係していることが明らかになってきました。
このようなささいなお口のトラブルが長く続くようであれば、歯や口の働きが少しずつ衰えている可能性があります。
健康と要介護の間には、筋力や心身の活力が低下する「フレイル」と呼ばれる中間的な段階があるとされ、その手前にある「前フレイル期」にオーラルフレイルの症状は現れます。
フレイルから要介護へ症状が進むことなく健やかで自立した暮らしを長く保つためには、オーラルフレイルの段階で気づき、予防や改善に努力することが重要であるということがわかってきました。
歯や口にはそれぞれの「働き」を本来多く持っています。専門的には「口腔機能(こうくうきのう)」と呼ばれています。
その口腔機能を大きく分けると「食べること」の噛む、すりつぶす、飲み込む、味わうこと、「話すこと」の発音、会話、歌うことなどで、笑う、怒るなどの「感情表現」や「呼吸」なども含みます。
加齢により噛む力が低下すると、食事がのどに詰まりやすくなります。また、飲み込む力が衰えるとむせやすくなります。口の中を清潔に保ち、歯の表面を強くする働きのある唾液の分泌が少なるなることで虫歯、歯周病の進行や口臭の原因になります。
このようなお口の機能が低下することで、図のような悪循環に陥りやすいと考えられています。
オーラルフレイルはこうした口腔機能の軽微な衰えを示していますが、筋肉や心身の活力低下(フレイル)の初期症状とも考えられ、老化の最初のサインでもあります。
食べるための機能が正常か確かめる方法として「パ」「タ」「カ」の発声で簡単にチェックすることができます。
健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間で、その期間が延びることで介護の必要のない生活を長く続けることができます。
口腔機能が衰えると、会話が減るだけでなく、食べる量の減少や栄養状態の悪化により筋肉もやせていき体力低下で外出も少なくなります。つまり、歯や口の働きは「社会とつながる」ための重要な役割を担っていることがわかります。
高齢者にとって「社会とのつながり」を失うことで、心身の活力の喪失から要介護が必要な生活に陥ってしまうこともあります。
高齢者にとって大切なことは、しっかりとした食生活を意識すること、仕事や趣味、ボランティアなどで楽しく会話をしたり体を動かすことで社会とのつながりを持つこと、そうしたことが健やかな「口腔機能」を維持することになり、また健康寿命を延ばすことにつながると考えられます。
長い人生をすこやかに生き抜くためには、「オーラルフレイル」への取り組みが必要です。
オーラルフレイルへの対策として「セルフケア」でできることは大きく2つあります。
1つは常に口の中を清潔に保つこと、そしてもう1つは口腔機能、つまり歯と口の働きを維持・改善に努めることです。
※歯石の除去などはセルフケアだけでは対処することはできません。歯や口を清潔に保つためには、歯医者さんで定期的に清掃と検診を受けるようにしてください。
*口輪筋は口の周りを取り囲んでいる筋肉で、口を開けたり閉じたりする時にはたらきます。
「ラ」は舌全体を上下にしっかり動かす発音です。「パ」「タ」「カ」に「ラ」を加え、
●「パパパ、タタタ、カカカ、ラララ」そして
●「パタカラ、パタカラ、パタカラ・・」と続けて発音しましょう。
できるだけ大きな声で、はっきりと声を出すことで食べるための機能のトレーニングができます。
唾液腺をやさしく刺激することで、唾液がたくさん出るようになります。唾液がたくさん出ると食べ物が口の中でまとまり、飲み込みやすくなります。
耳の前、上の奥歯のあたり
あごの骨の内側の
やわらかい部分
あごの先の内側舌の付け根
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